外壁塗装は見た目を保つためだけでなく、雨風や紫外線から家を守り、建物の寿命を伸ばす重要な工事です。しかし塗装の種類や家の大きさ、施工内容によって費用は大きく異なります。この記事では、外壁塗装の費用相場をはじめ、費用の内訳や見積もりのポイント、費用を抑える方法について紹介します。
外壁塗装は同じ内容の工事でも、業者によって費用が違うことも珍しくありません。信頼できる業者を選ぶために相場を調べ、複数の見積もりを取りましょう。
外壁塗装の費用相場

一般的な一戸建て(延床面積100〜150㎥)における外壁塗装の平均費用は、30〜100万円とされています。相場は、以下のとおりです。
- 坪数別の費用相場
- 地域別の費用相場
- 屋根塗装を含む費用相場
坪数別の費用相場
外壁塗装の費用は、坪数によって変動します。家の大きさが増すごとに塗料の量や工期が長くなるため、費用も高くなります。具体的な費用相場は下記のとおりです。
坪数 | 費用相場 |
20坪 | 60〜120万円 |
30坪 | 90〜180万円 |
40坪 | 120〜240万円 |
50坪 | 150〜300万円 |
60坪 | 180〜360万円 |
70坪 | 坪数に応じた見積もり |
70坪以上の大型住宅や特殊な設計の建物は、一律の相場が設定されていないため、坪数に応じた見積もりが必要です。上記を参考にし、自分の家の坪数に適した費用計画を立ててください。
地域別の費用相場

地域によっても、外壁塗装の費用相場は異なります。以下に地域ごとの相場をまとめました。
地域 | 費用相場 |
東京都内 | 80〜120万円 |
大阪府内 | 75〜115万円 |
北海道 | 70〜110万円 |
福岡県 | 72〜112万円 |
沖縄県 | 130〜180万円 |
地方都市 | 65〜100万円 |
地域によって費用が異なる理由は、複数あります。気象条件の違いにより塗料の種類や施工方法が変わること、中心部やアクセスが難しい地域での足場代や施工費の高騰などです。業者間の競争と物価水準も、工事費用に影響を与えます。
自分の住む地域の相場をあらかじめ把握しておき、地元の複数業者から見積もりを取りましょう。
屋根塗装を含む費用相場
外壁塗装と一緒に屋根塗装を行う場合、一般的な相場は約100〜200万円程度です。外壁塗装のみと比較して、10〜20%ほど高くなります。屋根の形状が複雑で、施工面積が広い場合や補修が必要な場合は、追加費用がかかる傾向です。使用する塗料のグレードによっても大きく変動し、長持ちする塗料ほど高価です。
屋根塗装を含めると費用は上がりますが、足場を利用できるため、総合的にはコスト効率が良くなります。外壁塗装の見積もりを取る際は、外壁のみと屋根塗装を含んだ見積もりと、両方取りましょう。複数の見積もりを取ることは、適正な価格で質の高い施工を行うためにも大切です。
外壁塗装の費用が異なる主な要因

外壁塗装の費用は、家の形や使用する塗料、面積によって異なります。業者による費用の違いは、主に次の2つです。
- 塗料の種類
- 足場代
塗料の種類
塗料の違いは、費用に差が出る大きな原因です。塗料にはグレードがあり、種類によって長持ちする耐久目安が異なります。一般的に取り扱われている塗料の種類と特徴を下記にまとめました。
塗料の種類 | 特徴 | 耐久性 |
アクリル塗料 | 価格が手頃である | 低 |
シリコン塗料 | 中価格帯でバランスが良い | 中 |
ウレタン塗料 | 耐候性に優れるがやや高価になる | 高 |
フッ素塗料 | 格別高い耐候性で価格は高くなる | 高 |
遮熱塗料 | 遮熱性能を持ち、価格は高め | 中〜高 |
セラミック塗料 | 耐熱性と防汚性に優れる | 高 |
エラストマー塗料 | ひび割れ防止に効果的である | 中〜高 |
水性塗料 | 環境に優しい | 低〜中 |
溶剤型塗料 | 耐久性が高いが施工に注意がいる | 高 |
エコ塗料 | 環境負荷が低い | 中 |
長期居住の予定であれば、耐久性の高い塗料が適しており、長期的に見るとコスト効率が良いです。価格が安い塗料は家計に優しいですが、数年で塗り替える必要があります。塗料は業者によって取り扱う種類が異なります。居住年数や資産価値を考え、予算に合った塗料選びが大切です。
足場代
外壁塗装における足場の設置は、作業員の安全確保のために必須です。足場代は外壁塗装全体の費用に対し大きな割合を占める部分のため、見積もりでしっかりと確認してください。足場代に影響を与える要因は以下のとおりです。
- 家の大きさや面積
- 複雑な形や傾斜が急な土地
- 工期
- 専門業者への依頼
家が大きければ必要な足場の量が増え、複雑な地形であれば足場を固定する難易度が上がります。足場代の内容は、足場の組み立てや解体、輸送作業などです。足場は通常レンタルのため、借りる期間に比例し、工期が長くなるほど費用は膨らみます。
近隣への配慮や保安措置は、追加費用の要因です。足場の設置は一般的に足場専門の業者に依頼しますが、自社で取り扱い部門があれば、割安になる可能性もあります。
外壁塗装の費用内訳

外壁塗装の費用内訳は、以下のとおりです。
- 材料費
- 人件費
- 足場代・養生費
- その他諸経費
材料費
外壁塗装の材料費は主に塗料代で、他に養生部材やコーキング材などが含まれます。価格が変動する原因は、塗料の種類や品質、ブランドによって大きく異なるためです。高品質な塗料は価格も高く、遮熱塗料や防カビ塗料の使用は、追加料金がかかる可能性もあります。
外壁塗装の耐久性は、下塗り材と上塗り材の種類や塗布回数によって変わり、外壁の寿命を左右する上で重要です。外壁の状態が悪い場合は、下地処理に費用がかかる場合もあります。塗装する外壁の面積によって必要な塗料量が変わるため、坪数に応じた費用を確認します。
塗料を選ぶ際は保証期間を確認し、万が一のトラブルに備えましょう。材料費が適切かどうか、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
人件費
工事費用は、材料費だけでなく人件費も大きな部分を占めています。内訳は作業する職人の給料が大きく、作業にかかる総時間や日数、職人の技能レベルや経験、チーム構成によって異なります。
同じ作業でも熟練の職人ほど作業効率が高く、品質も安定するため人件費は高い傾向です。繁忙期や閑散期によっても変動があります。地域による給料基準の違いも、費用が異なる要因の1つです。
工事が複雑だったり広範囲であったりと、工期が長くなれば人件費は上乗せされます。見積もり時点で発見できなかった修理が必要な箇所が、足場組み後に発見された場合、追加作業が必要です。見積もりを比較する際は、追加作業や工期延長時に、費用が加算されるかどうか確認してください。
足場代・養生費

外壁塗装では、足場代や養生費の費用が欠かせません。足場は高所で安全に作業するため、人が移動したり工具を置いたりするための仮設の建造物です。養生は、塗料の飛散防止が目的です。足場周りや窓、塗装しない箇所にテープとシートを張り、家や近所、道路を保護します。
足場代の相場は、建物の高さや面積に応じて料金が算出されます。建物が大きければ費用は高額で、日数が長くなれば人件費もかかるため高額になる傾向です。足場代には他に、資材のレンタル代や輸送費、設置作業、撤去費用も含まれます。
養生費は、家の大きさや施工面積に左右されます。環境保護の観点から、規制や地域の条例に従い、適切な養生作業が必要です。足場代と養生費は、外壁塗装の費用の中でも重要な部分であるため、適切な設備投資として捉えましょう。
その他諸経費
その他諸経費があれば、内容を詳しく確認します。以下は、諸経費に含まれる内容です。
- 交通費
- 工事中の保険料
- 産廃処分費
- 仮設トイレ設置費
- 許認可申請費
- 工事管理費
- 水道光熱費
不測事故に備えた予備費や、工事期間中の近隣への配慮に関する費用も計上されます。近隣住民への配慮を、どの程度業者が行ってくれるか、合わせて確認してください。
諸経費は会社の運営に欠かせない費用のため、見積もりに計上されていなくても必要になる項目です。諸経費の項目がない場合は、別の項目に上乗せされている可能性があります。きちんと費用計上されていれば、信頼できる会社として内容を確認してください。
外壁塗装の見積もりのポイント

外壁塗装では、複数の業者から見積もりを取ることが大切です。見積もりが届いたら、価格やサービス内容を比較し、細かくチェックしてください。見積もり書の読み方や、必要な工事費用、不要な内容についての見方を詳しく解説します。
見積もり書の読み方
見積もり書は、工事にかかる総費用を把握するための大切な資料です。内容をきちんと読み解き、不明瞭な費用が記載されていないか確認しましょう。以下は、見積もり書で確認したいチェックポイントです。
- 日付と有効期限
- 業者の名前と連絡先
- 工事内容の詳細な記述と項目別の価格
- 追加工事・オプション費用
- 材料費や人件費・足場代
- 保証内容(保証期間や対象範囲)
- 支払い条件(前金や分割・完工後一括)
- 税込か税抜かと消費税率
- キャンセルポリシーやクーリングオフ
- 適切な工事日程
- 署名・捺印
見積もり書の内容が、相場と合っているか確認します。複数業者から見積もりを取っているうちに有効期限が切れた場合は、再度見積もりを依頼してください。
必要な工事と余計な追加工事の見分け方
外壁塗装には、必要な工事と余計な追加工事があります。見積もり書では、何が必要か見分けることが重要です。余計な工事かどうかを見るために、以下のポイントを確認しましょう。
- 各工事項目の目的と効果を説明してもらう
- 美観の目的だけの工事でないか注意する
- 無料点検や診断を利用して工事の必要性を確認する
- 専門家や知識のある人から助言を得る
まずは、複数業者に見積もりを依頼してください。どの業者であっても必要な工事は変わりませんが、内容が違えば積極的に聞くべきです。具体的な理由を聞き、納得できる説明を求めます。ときには建物の現状を正確に把握し、第三者の意見を聞くことも大切です。
建物の劣化具合や緊急性を考慮して、工事内容を判断することが重要です。
» リフォームの見積もりで後悔しないための準備とは
外壁塗装の費用を抑える方法

外壁塗装は決して安い金額ではありません。工事費用を抑えるために、次のような方法を検討してください。
- 相見積もりをする
- 塗料でコストダウンする
- 信頼できる業者に依頼する
相見積もりをする
外壁塗装工事では、複数業者に見積もりを依頼する「相見積もり」がおすすめです。相見積もりをすることで、各業者の工事内容や塗料の種類、保証期間を比較検討できます。
外壁塗装業者と言っても、業者によって得意分野は異なります。屋根塗装が強みである業者や、自社開発の塗料を使用している業者などさまざまです。見積もりの詳細を聞くことで、サービス内容や適正価格を判断できます。
不必要な工事や高額な見積もりを出してくる業者も存在します。正しい判断のためにも、相見積もりを取って適正な金額かどうかチェックしましょう。
塗料でコストダウンする

最適な塗料選びは、コスト面で大きな違いが表れます。10年以上住む家と、3年ほど住む家では、必要な塗料の種類は変わるからです。
塗料の中でも、シリコン塗料やフッ素塗料は高額です。しかし耐久年数が高い塗料は塗り替え周期が短くなるため、長期的に見ればコストを下げられます。一方アクリル塗料やウレタン塗料は安い反面、塗り替え周期が短くなるため、長期で家に住む場合はコストがかさみます。
建物の劣化が進んでいる場合や、台風の影響を受けやすい地域では、より耐久性の高い塗料を選びましょう。塗料メーカーのキャンペーンや割引を利用すればコストが削減できます。居住年数や地域の環境、維持費を考え、長期的な視点で選ぶことが大切です。
信頼できる業者に依頼する
外壁塗装の品質と耐久性は、施工業者の選択に大きく左右されます。信頼できる業者を選べば、高品質な施工を期待でき、万が一のトラブル発生時にも迅速な対応が可能です。選ぶポイントは以下のとおりです。
- 実績と施工事例を見る
- 資格を持った技術者かどうかを確認する
- 適正な保険加入があるか確認する
- 保証内容と期間を把握する
- 実際の現場の仕上がりを見る
- アフターフォローやメンテナンスの有無を調べる
- 業界団体に加入しているか確認する
- 口コミや評判を調べる
契約前の無料見積もりや相談が可能かどうかも、確認してください。複数業者に見積もりを取れば、価格が適正かどうかわかります。業者が公的認定を受けているか、業界団体に加盟しているかも重要なポイントです。業者が一定の基準を満たしている証であり、信頼性の証明になります。
外壁塗装の費用を左右するその他の要因

外壁塗装の費用は、常に一定ではありません。以下に当てはまれば、追加費用の可能性があります。
- 建物の立地条件
- 壁の素材
- 塗装の時期
建物の立地条件
建物の立地条件によっては、費用が上乗せされる可能性があります。立地が悪いと塗装工事に必要な手間やコストがかかるため、足場代や人件費が高くなるからです。
交通量が多い立地や密集した地域では、作業の難易度が上がります。交通による汚染が心配され、養生に手間を取られるのが原因です。海や山に近い地域や日当たりの良い環境では、塩害や強風、紫外線により塗料の劣化が早まります。
高層建築やデザインが複雑な建物なども、足場代が高い傾向です。家までのアクセスが悪いと機材搬入に手間取るため、コストに影響します。立地条件は塗装の困難さを左右します。見積もりの依頼時には、業者に立地条件をきちんと伝え、適切な費用計算結果から費用を算出してください。
壁の素材

壁の素材は、外壁塗装費用に影響を与える要素です。以下に壁の種類と特徴をまとめました。
壁の素材 | 特徴 |
アルミニウムやガルバリウム鋼板 | 耐久性が高く軽量で錆びにくい |
ビニールサイディング | メンテナンスが容易 さまざまなデザインが選べる |
木材 | 天然の風合いが魅力 定期的な塗装やメンテナンスが必要 |
スタッコ | 耐久性と断熱性に優れる 外観は美しいが亀裂が生じやすい |
窯業系サイディング | 耐久性や遮音性に優れる メンテナンスが比較的容易 |
コンクリート | 強度が高く耐久性に優れる 重量があり施工が困難 |
レンガ | 人気があり耐久性に優れる 重量が重くコストが高い場合がある |
ヒビ割れやカビ、はがれなど壁の状態によっては、塗装の前に適切な補修作業が必要な場合もあります。壁だけでなく、金属や木部箇所、プラスチック箇所の塗装についても相談が大切です。
塗装の時期
外壁塗装におすすめな時期は、気候が安定している春や秋です。夏の高温多湿や冬の低温は、塗料の乾燥に悪影響を及ぼす可能性があります。
梅雨時期は湿度が高く雨で日程が伸びる可能性もあり、塗装工事に向いていません。冬は日照時間が短く、乾燥時間が不足しがちです。工事の繁忙期には価格が上がりやすいため、コストを抑えたい場合はオフシーズンを狙いましょう。しかし工事の延期が起りやすい天候不順の時期は、避けた方が賢明です。
塗料メーカーや施工業者がキャンペーンを行っていれば、積極的に利用します。適切な時期に塗装をお願いし、高品質な仕上がりと長期的な保護効果を確保してください。
まとめ

外壁塗装は、長く家に住み続けるために重要な工事です。しかし費用相場は、坪数や地域、屋根塗装の有無で変わります。複数業者から見積もりを取り、以下の内容を比較してください。
- 塗料の種類
- 足場代
- 人件費
- 諸経費
見積もりを取る場合、立地条件や壁の素材をきちんと伝え、適正価格を計算してもらいます。塗装の時期がいつ頃になるか確認し、キャンペーンがあれば積極的に活用してください。
必要な工事か不要な工事かを判断し、不明な点はすべて聞いて確認しましょう。工事内容や塗料の説明、アフターフォローの内容を聞いて、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
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